2019年8月号-藤巻健史氏独占インタビュー

2019年6月21日(金)発売の月刊仮想通貨8月号Vol.17より

「税制」が変える仮想通貨の未来

仮想通貨は投機的側面に注目が集まる半面、トレードの利益に課される税金の制度が課題となっている。株式やFXなどのキャピタルゲインに対する税率が最大約20%なのに対し、雑所得として計上される仮想通貨トレードでの税率は最大約55%だからだ。
 そうした仮想通貨の税制の見直しに向け、2018年12月に「仮想通貨税制を変える会」を立ち上げたのが参議院の藤巻健史議員(日本維新の会)だ。藤巻議員は、萌芽期にある仮想通貨発展の阻害要因は「税制にある」とし、税制改正の必要性を訴えている。 
 仮想通貨の社会への浸透に向け、税制の変革と取引環境の改善を強く政府に求める藤巻議員。その信念は、三井信託銀行(現三井住友銀行)やモルガン銀行など、国内外トップクラスの銀行業界を歴任した経験から来る、国家税制に対する危機感にある。藤巻議員は政府が負債をどの程度で返済で
きるかを示すGDP(国内総生産)に対する債務残高の比率を踏まえ「日本の財政は世界最低クラスにある」と断言する。

2018年の日本の政府総債務残高(対GDP比)は、237%。ワースト2位で183%のギリシャ、ワースト6位で132%のイタリアに比べて圧倒的に高い。つまり、日本は約550兆円のGDPに対し、2倍以上の負債を抱えている状況なのだ。藤巻議員は「日本は危機感がない。危機を先送りしている」と批判。日本の財政を船に例えた場合、とっくに沈没していると揶揄する。
 国家財政が危機的な状況下にある中で、藤巻議員は、仮想通貨が魅力的な投機商品であるのと同時に「避難通貨としての役割を果たす」と評価する。ただ、普及の障壁となるのが税制面の問題。藤巻議員は会長を担う「仮想通貨税制を変える会」でも訴える4つの税制変更を改めて提起した。

①最高税率55%の総合課税から20%の分離課税へ
「仮想通貨間の取引益に対する税制は、最高税率55%の総合課税。給与所得のように安定した収入が見込まれるものであるならば、総合課税適用も合理性がある。しかし、仮想通貨のトレード利益はそうではなく、株式や投資信託・FXと同様に収益が不安定で、損失を出すケースもある。その観点から仮想通貨間の取引益は、株式などと同様に20%の分離課税を適用すべきだ」

②損失の繰り越し控除を可能に
「仮想通貨のトレード損失を翌年以降に繰り越すことは認められていない。仮に今年大きな損失を出したが翌年はそれなりの利益を出した場合、通算の損益はマイナスであったとしても多額の税金を納めなければならない。同じ性質を持つ株式や投資信託などは取引損を繰り越すことができ、翌年以降の利益から差し引くことができる。税の公平性の観点から、仮想通貨間の取引損の繰り越し控除を認めるべきだ」

③仮想通貨間の利益を非課税に
「仮想通貨の売買も、現在の税制では課税対象。例えばビットコインでリップルを買ったとしても、その時点でビットコインの売買損益を確定させ、利益が出ていたら納税をしなければならない。1回の取引ごとに損益を計算する作業は、極めて煩雑で大きな負担となっている。仮想通貨間の取引量を増加させ、仮想通貨市場を活性化させるために、仮想通貨間の売買益を非課税とするべきだ」

④少額決済を非課税に
「実社会の仮想通貨決済も、現在の税制では課税対象とされている。例えば飲食店で食事をし3000円分の会計をビットコインで支払ったとしたら、その時点でのビットコイン価格とビットコインの購入価格から損益を確定させ、利益が出ていたら納税しなければならない。商品決済のたびに損益計算をしていたら、実社会での仮想通貨決済の浸透は望めない。少額の仮想通貨決済は非課税とし、実社会での仮想通貨決済を拡大させていくべきだ」

 このほか、藤巻議員は仮想通貨のトレード利益を「雑所得ではなく、譲渡所得に分類すべき」と求める。租税法研究の第一人者で、「ビットコイン等の仮想通貨は譲渡所得と考えられる」と主張した東京大学の金子宏名誉教授の言説を引き合いに、「適切な税法を適用させるのが国の発展に適切だ」とする。
 また、仮想通貨市場を勃興、成熟を促す幾つかの活性化策を提案。市場拡大に不可欠な機関投資家の参入を推進させるために「仮想通貨のデリバティブ商品が必要」と強調。過去に在籍したモルガン銀行では、1990年代に短期間でデリバティブが利益の4割を占める商品まで成長したとし、「きちんとした商品なら大きく成長する」。証券会社のセキュリティで守られる上場投資信託(ETF)も、ハッキングリスクの問題を減少させる利点から、導入するべきという。
 仮想通貨の利益を国家に集中させる収奪的な仕組みから、利益を正しく社会に還元させる包括的な仕組みへと変わるかどうかは、藤巻議員の腕に掛かっていると言っても過言ではない。藤巻議員、そして「仮想通貨税制を変える会」の今後の活動から目が離せそうにない。

(写真:遠藤仁)

Profile(雑誌掲載当時のもの)
◉藤巻健史(ふじまき たけし)
参議院議員。日本維新の会政調会長代行、財政金融委員会理事。元モルガン銀行 日本代表・東京支店長。元ジョージ・ソロス氏アドバイザー。元一橋大学講師。仮想通貨税制を変える会会長。仮想通貨税制を適切なものへ変えるべく、安倍晋三総理や麻生太郎副総理、国税当局との議論を続ける。今夏の参議院選挙では改選を迎える。日本維新の会から全国比例区で出馬予定。

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