今月のファンダメンタルズ vol.2

月刊仮想通貨vol.3 2018年4月23日発売号より

なぜ仮想通貨は「暗号通貨」と呼ばれるのか

3月19日から二日間の日程でアルゼンチンのブエノスアイレスにて開催されたG20 財務相・中央銀行総裁会議が先日閉幕した。
共同声明では、仮想通貨を巡る対応策と、トランプ米政権による保護主義的な通商政策に対する牽制の二つが主に触れられていた。

仮想通貨については、共同声明の中で「暗号通貨」と呼んで、各国の中央銀行による既存システムで流通している「法定通貨」とはっきりと分けられていた。
今回はこの呼称の背景、つまり、なぜ仮想通貨が別名「暗号通貨」と呼ばれるのか、「暗号」と言う言葉を手がかりに考えてみる。

巷間で出版されているフィンテックの入門書では、仮想通貨にとって欠かせないブロックチェーンとは、という定義から始まって一見、分かりやすそうなイラストで説明しているケースが多い。
かく言う私自身、前回は『ブロックチェーンとは、分散型の台帳技術であり一旦ブロック内で書き込まれると遡ってそのデータの改ざんがほぼ不可能となる「仕組み」』と定義付けた。
これだけでは唐突感がやや強い。
ブロックチェーンの仕組みの背後には、実は日ごろ私たちがすでに恩恵に浴している重要な技術がある。
それが暗号技術である。

暗号技術によって、私たちは安心して銀行のATMで大金を送金・出金することができるし、インターネットでクレジットカード決済もできる。
いわば金融取引に欠かせない「認証」を背後で可能にしてきたのが暗号技術なのである。
仮想通貨を根幹で支えているのも暗号技術なので別名「暗号通貨」と呼ばれるわけだ。
つまり、私たちに馴染みの深い技術を徹底的に活用したのが仮想通貨なのである。
具体的には、ハッシュ関数という関数を使った技術である。

ハッシュ関数とは、要約関数とも呼ばれ、ある特定のデータ(数値)からそのデータを要約した数列(ハッシュ値)を生成する一方向関数のことである。
一方向関数なので、逆に要約された数列から元々のデータを求めるのが困難となる。
また、データの初期値がわずかに違っても、その結果が大きく異なるという特色を持つ。
つまりデータがわずかでも改ざんされていれば、結果が大きく異なることで改ざんの事実が検出できる。
逆に、要約された結果が同じであれば、改ざんされていないことがわかる。
実際に、ハッシュ値は、取引の中でどのように流れていくのだろうか。
仮想通貨による取引を想定してみる。
ある取引(取引B)の直前には別の取引(仮に取引Aとする)が存在する。
取引Aはハッシュ関数によりハッシュ値が生成され、そのハッシュ値は取引Bの数値の一部となる。
このそれぞれの取引がブロックのようにチェーン(連鎖していく)からブロックチェーンと呼ばれわけだ。
基本的な概念はざっとこんな感じとなるが、次回は、もう少し詳しい実用レベルまで掘り下げてみよう。

Profile
北村 裕
日本の証券会社に勤務後、米国留学、ニューヨークにて投資銀行業務を経験後、外資系メディアで編集責任者などを歴任。大手運用会社で外資ファンドの調査、提携業務などに長年携わる。現在も金融業界で勤務するかたわら、最新の金融工学などの普及も志す。

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