第三回 元銀行員が考察、今後の実需が期待される仮想通貨

月刊仮想通貨vol.6 2018年7月23日発売号より

第三回 元銀行員が考察、今後の実需が期待される仮想通貨

 「仮想通貨のバブルは終わった」という話は、あなたも聞いた事があるだろう。2017年から2018年の初めにかけて、バブルといわれる時期は到来した。2017年1月にまだ1BTC=10万円台だったビットコインは驚くほどの高騰をみせて、一時は20倍もの1BTC=200万円を超えるまでに。他のアルトコインも数十倍、数百倍という驚異的な値上がりを記録したものの、その後の勢いは失速。国内の仮想通貨取引所での騒動、また各国における規制強化などを経て、相場は下降トレンドをたどった。各仮想通貨の取引高は激減し、本コラム執筆時点で1BTC=60万円台と、以前の盛況は影をひそめた。まさに、「バブルは終わった」と表現されるような局面に私たちはいる。
ではバブルが終わった先の、これからのステージを考えてみよう。著者の結論はこうだ。「今後は実需を見据えた銘柄(コイン)への投資が重要」となるだろう。言い換えるなら、仮想通貨への熱狂的な投機需要は終わり、実際の需要すなわち「実需」が期待できる銘柄が生き残っていくという予想だ。仮想通貨には、既存の決済システムや貨幣概念を変える大きな可能性をたしかに秘めている。しかし、その可能性にばかり人々の注目が集まってしまい、実用化もままならないまま投機的な対象として扱われるようになってしまったのが、仮想通貨バブルの大きな要因だろう。「仮想通貨を買っていれば、寝ている間にお金が増える」という夢のような局面は終わった。現実的な目線にて、手堅く実用化されていくであろう銘柄を見定めていく必要がある。
では、今後の実需が見込まれる仮想通貨は何か。今回は、著者の見解にて3つの銘柄を紹介したい。前提として知っておいて頂きたいのは、仮想通貨の多くはただの貨幣(通貨)ではなく、システムを構築するプロジェクトとなっている点である。ゲームで分かりやすく例えるなら、「こんなゲームを作りますというのがプロジェクト」であり、「ゲームの中で使えるお金が仮想通貨」というイメージだ。その仮想通貨が具体的にどんなシチュエーションで使われるのか、利用するとどんなメリットがあるのかという発想を持ちながら評価していくと良い。よって、「その仮想通貨銘柄がベースとなって利用される場が出来上がりそうか」というポイントを踏まえながら、一つずつ紹介していこう。
1つ目は、イーサリアム(ETH)。これについては、著者と同じ予想を持たれている方も多い事だろう。イーサリアムはよく「プラットフォーム(土台)を作るプロジェクト」と言われるが、ただの仮想通貨の枠に収まらないポテンシャルがある。いち早くイーサリアムというプラットフォーム上で行われつつあるのが、dApps(分散型アプリ)でのブロックチェーンゲームである。ゲームをプレイするには、イーサリアムが利用料として必要になり、ゲーマー達は自ずとETHを購入するため、すでに相応の需要が見えつつある。ゲーム内のアイテムやキャラクターは、ブロックチェーンを活用する事でコピーがほぼ不可能になり、ユーザー同士の売買によって稼ぐ人も出てくるだろうという点も興味深い。イーサリアムの役割を簡単に説明するなら、「ブロックチェーンにおける交通インフラ」だと思ってほしい。まだ何も無い土地に、主要な駅ができて多くの人が利用するようになり、駅周辺も栄えていく…というイメージだ。イーサリアム上でさまざまなアプリやシステムが機能していく未来はすでにある程度形となっており、大きな実需が見込まれるだろう。
2つ目はリップル(XRP)。これは著者が元銀行員という事もあるが、金融関連の需要見込みが根強いとされる銘柄だ。特に国際送金において、現状のシステム(SWIFT)では複数の銀行を介して決済が行われるため、到着が遅い・手数料が高いなどのデメリットが昔から続いている。複数の銀行を経由する背景として、通貨ペア(交換できる通貨の組み合わせ。米ドル/日本円など)が限られている事が大きな要因である。そんな状況を打破すべく、リップルはあらゆる通貨との交換を可能とする「ブリッジ通貨」として大きな注目が集まっている。また金融に関する仕事に身を置いていた方なら実感していると思うが、既存の金融システムは数十年前からずっと使われ続けている。やたらアナログな要素も多くあり、手作業に依存してる部分も多いのが事実だ。三菱UFJ銀行は今年5月にも、リップルを使用しての海外送金の実証実験を行っている。金融機関としても危機感を感じており、リップルと手を組む道を選んでいる事は明白である。普段から銀行などを利用している私たち消費者側としても、利便性が高まるとなれば実用化が待ち遠しいだろう。
そして3つ目は、海外仮想通貨取引所のBinance(バイナンス)のBNBトークン。これはあまり聞きなれない方も多いかもしれないが、Binanceは世界最大規模の取引所として一躍有名になった。手数料が安い、取扱い銘柄が100種類以上と豊富で、2017年の半ばより日本語対応もされた(現在は非対応)事から、愛用している日本人ユーザーも多い。ここでいう仮想通貨取引所のトークンとは、その取引所で使えるクーポン券のようなものだと思って欲しい。クーポン券であるトークンを使ってその取引所で売買すれば、手数料がさらに安くなるなどのメリットがある。取引所が盛況になればなるほど、トークンの利用者も増えて価値も上がっていくという仕組みだ。Binanceには、一つの仮想通貨取引所に収まらないスケールの大きさが見える。大きなトラブルが無ければ、Binanceユーザーはさらに増加していくだろ
うという予想から、今後も目が離せない。
ではビットコイン(BTC)はどうだろうか?ここまで読んで、あなたもそう疑問に思った事だろう。ただ残念ながらビットコインは現状、単なる通貨にすぎない。決済に使われる事がメインの役割となり、イーサリアムのようにプラットフォームを持つ事もない。であれば、ビットコインが持つアドバンテージとしては、すでに他の仮想通貨より名が広まっているという知名度だけだろう。ビットコインより魅力的な機能がある銘柄は数多くある。その中で、ただの通貨として使われるだけでは、今後の実需は見えづらい…というのが正直なところだ。
最後に、草コインへの投資についても言及しておきたい。草コインとは、取引量がまだ少なく、世にもほぼ知られていない通貨の事だ。バブル期には草コイン投資が非常に流行り、価値がほとんどゼロだった銘柄が、突如注目が集まって数十倍以上に暴騰した事で話題を呼んだ。ただそんな草コインへの投資は、現時点では避けておくのがベターだ。冒頭でお話した通り、すでに仮想通貨バブルは落ち着き、値上がりしていた多くの草コインの価格も結局元の水準に戻った。重ねて言うが、これからは実需が見える通貨に絞り、投資を行っていく事が望ましい。まだ先がまったく見えない草コインを買うなら、イーサリアムを選んだ方がよっぽど手堅いだろう。仮想通貨への淡い期待は抱かず、現実的な目線を持って投資を行っていこう。

Profile
小林亮平
元メガバンク銀行員。
三菱UFJ銀行に3年9ヶ月勤務後、現在は仮想通貨ブログ「BANK ACADEMY」を運営。
月30万PV達成し、ソフトバンク系列のSBクリエイティブ社より電子書籍も出版。
銀行員時代は法人業務に従事、丸の内の本部経験もあり。
【著者HP】https://bank-academy.com/

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