今月のファンダメンタルズvol.5

月刊仮想通貨vol.6 2018年7月23日発売号より

プロの領域に進出するフィンテック技術-資産運用ビジネスのケース

前回は、蓄積されたビッグデータの大量かつ高速なデータ分析といった、フィンテックが最も得意とする技術を武器に異業種が銀行業に参入している現状を概観した。
今回は、よりプロの領域とされてきた資産運用ビジネス、中でも投資顧問の分野でのフィンテック技術の実用化に注目してみる。
銀行業が顧客に対して金融サービスを「大量」かつ「画一的」に提供する一方、資産運用ビジネスは専門家が金融サービスを「個別的」かつ「差別化された形」で提供するものだと考えられてきた。
資産運用ビジネスにとって、顧客(投資家)へのより良いサービスとは、「個別的」「差別化された形」を生かし、より優れた運用パフォーマンスを達成することにほかならない。
これが運用能力の高さが対価である手数料・報酬の決定要因であるという投資顧問業の考え方につながってくる。
この考え方は、個人向けの公募投資信託にも敷衍され、個人投資家は対面でのアドバイスの対価としての「販売募集手数料」と、運用の対価としての「信託報酬」を、その金融商品がマッチングしない場合でも非民主的な形で払うことを余儀なくされてきた。
しかし、フィンテックが専門家の圧倒的に優位だったこの構図を突き崩しつつある。
具体的にはAIによる運用を行うAI投信と、投資顧問の領域でのロボアドバイザーおよびコピートレードである。
このうち、AI投信によるメリットを享受するのは運用者の側である点、コピートレードは日本ではまだ提供されていないサービスである点からそれぞれ解説を省略させていただく。
ロボアドバイザーとは、ウェブベースでの投資一任契約のサービスと定義される。
基本的な仕組みは、投資家が自ら入力した投資家情報と、投資対象となり得る金融商品に関する商品情報を、それぞれポートフォリオ構築アルゴリズムの中に取り込みマッチングを行う。
その過程で、最適化したポートフォリオが構築され投資決定が行われる。
手数料率は、預かり資産の額に対する料率として設定され、0・3〜1・0%の間というのが一般的である。
資産運用アドバイスは、長い間、自動化が困難だと見なされてきた。
なぜなら、投資家のリスク許容度を判定するには、顧客属性などの定性情報を類型化・カテゴライズするだけでなく、行動経済学的な心理面でのアプローチが必要で、その過程で投資助言者の膨大な経験の蓄積が不可欠と見られてきたからである。
この最も困難な課題を解決したのがフィンテック技術であり、特にAIの進化が決定的な役目を担うことになった。
現在、日本では、WealthNavi、お金のデザイン(Theo)、大和証券、楽天証券などが、米国ではWealthfront、Betterment、Personal Capital、Vangard、Charles Schwab、英国ではNutmegなどがロボアドバイザー事業者として知られている。
このうち、WealthNaviは同社HPで資産運用アルゴリズムのWhite Paperを公開している。
今回、概説したロボアドバーザーの仕組みをより詳しく具体的に理解できる分かりやすい資料であり、ご一読をお勧めしたい。

Profile
北村 裕
日本の証券会社に勤務後、米国留学、ニューヨークにて投資銀行業務を経験後、外資系メディアで編集責任者などを歴任。大手運用会社で外資ファンドの調査、提携業務などに長年携わる。現在も金融業界で勤務するかたわら、最新の金融工学などの普及も志す。

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