今月のファンダメンタルズ vol.5

月刊仮想通貨vol.5 2018年6月23日発売号より

日本の安全保障政策

安倍内閣は2014年7月、解釈改憲の閣議決定により安全保障政策のネックとなっていた「集団的自衛権」の行使を可能にした。
そして2015年7月16日、国際平和支援法案と自衛隊法改正案など10の法律の改正案を一つにまとめた平和安全法整備法案を成立させた。
また同政権は歴代内閣の安全保障政策の基本理念である「専守防衛」、「個別的自衛権」、「非核三原則」を堅持しつつも、対外的には「武器輸出三原則」の緩和や「特定秘密保護法」を通して西側諸国との多角的連携を強化し、国内的には「組織犯罪処罰法」(共謀罪)で当面の内外危機対応に関する法的整備を終えたものと思われる。残る大きな課題はおそらくこの政権でしか成し遂げられないであろう憲法の改正で「自衛隊」の存在を憲法上明記する作業のみである。
以上の基本的認識を踏まえた上でこの小論では、2018年末までに取りまとめる防衛省の「中期防衛計画」(2019年〜2023年)の中間報告原案に示された3つの論点すなわち
⑴ サイバー、宇宙、通信戦争
⑵ 南西地域の島嶼防衛
⑶ミサイル防衛
などについて、これまでの議論を紹介し政府の危機対応への理解を深め、一国民として「国防」の議論に参加できるよう最低限の知識を学んでおきたい。
一つ目の論点、サイバーや宇宙領域はこれまでの陸・海・空の領域に増して死活的に重要となる分野だ。
日本もようやくこの分野の司令塔を置きスタッフ数も近々150名体制となるが、中・露などの数千名に及ぶ陣容と比較すると取るに足らない微々たる存在でしかない。
然も日本はサイバー攻撃を仕掛けない国なのでサイバーテロ情報収集やサイバー攻撃の防止には他国と比べ数倍の労力を必要とする。
宇宙空間の方は準天頂衛星「みちびき」4機の打ち上げで当面米国GPSを補完し2023年には7機体制で独自の運用を開始し、ようやく中国の「北斗」衛星やロシアの「グロナス」衛星のレベルに達する予定だ。
二つ目の論点、南西地域での島嶼防衛は2018年4月7日、島嶼防衛部隊「水陸機動団」(2100名)が発足した。
陸上自衛隊は米国から水陸両用戦車AAV7を52両購入し島嶼防衛に充てる予定だ。
しかし島嶼防衛の要は制空権と制海権だ。
尖閣諸島は中国本土から400km、九州から1000kmなので距離的不利の状況に加えて日中の戦闘機保有数1:3という数的不利も考慮に入れた作戦が必要になることは言うまでもない。
米軍との共同対応が最後の砦になるかもしれない。
制海権の方は潜水艦、イージス艦、軽空母での対応で賄えそうだ。
三つ目の論点、ミサイル防衛は防衛省がイージスアショアの導入を決断した事で従来のSM3とPAC3に加えてSM3ブロックⅡAの3段構えでの防衛となり、弾道ミサイル、ロフテッド軌道のミサイル、巡航ミサイルのどれにも対応可能となる。
更にSM3ブロックⅡAの射程は2000km、射高は1000kmとSM3ブロックⅠAの2倍の性能となっており、先制攻撃を受けた直後の「敵基地攻撃」という万が一の対応も可能だ。

Profile
工藤 富夫
元ダウ・ジョーンズ経済通信社在日代表。
海外の主要銀行、証券会社でトレーダーとして活躍後、ドレスナー銀行東京支店のトレジャリーアドバイザー、住友信託ロンドン現地法人のチーフ・ユーロ・ポンド・トレーダーなどを経験。

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