今月のファンダメンタルズ vol.4

月刊仮想通貨vol.6 2018年7月23日発売号より

膠着化するドル/円相場

 2015年以来のドル/円チャートを見ますと、非常に興味深いことがわかります。
2015年は、126円接近するほどに上昇しましたが、翌2016年には、今度は9円割れまで下落、そして同年11月には、トランプ氏が大統領に選出された時点では118円台まで反発と、かなり荒っぽい上下動をしました。
ところが、2017年に入ると、年間の値幅が約11円、そして、今年は現在までで約9円と、かなり狭まっていることお分かり頂けることと思います。
ところで、現在、「コンプライアンス(法令順守)」が厳しくなり、確たる情報の入手は、不可能となっています。
余談ですが、どれだけ、顧客情報の漏えいが厳罰となっているかと申しますと、ある銀行の営業担当者など、8年遡って逮捕されているほどです。
ですので、今の時代は、相場の値動きや感触から、バックにどういったマーケット参加者が動いているかを類推するしかありません。
ですので、ここでお話しすることも、長年マーケットに携わることによって培った推理に基づくものだとご理解ください。
さて、2015年から、値動きが収束してきている大きな原因は、本邦機関投資家によるものではないかと見ています。
本邦機関投資家の外債投資の変遷を振り返って申し上げれば、1980年代のバブル期、生保が主翼を担い、今でいうところのオープン外債(為替ヘッジは任意で行う外債運用)を活発に行いました。
しかし、任意の為替操作はうまく行かず、1990年台のバブルの崩壊と共に、生保はオープン外債から撤退しました。
その後の四半世紀はリスクを嫌い、機関投資家はこぞって円債運用に走りましたが、もともと利回りが低いところに持ってきて、寄ってたかって円債に参入したため、運用難に陥ってしまいました。
そして、とうとう2014年に、本邦機関投資家の巨人GPIFが、円債重視から広く日本株、外債、外国株式に運用の幅を広げることを決定し、これに他の機関投資家も追随することとなりました。
したがって、本格的には、2015年からオープン外債の運用が再開されました。
そして、それから4年目に当たる、現在までの相場展開を振り返ってみますと、年を重ねるにしたがって、オープン外債に関わる為替の大口の売り買いがこまめで丁寧になってきていることが、収束する相場から読み取れます。
また、ここが下に抜けると大きく下がるポイントや、ここで上抜けると大きく上がるといったポイントでは、防戦的な売り買いが大きく出ていることが値動きからも良く読み取れます。
こんな、話しもあります。
各機関投資家は、今年の高値をどのあたりで見ているかというと、112円から120円ぐらいで見ているというのです。
つまり、一番近くに見ている機関投資家は、なんと112円という近場でしか見ていないのです。
それなら、大雑把には、レンジ幅を105円から112円ぐらいで見て、その中で、こまめに丁寧に売り買いを繰り返すのも確かに手ではあります。
ただし、気をつけなくてはならないことは、往々にして、レンジ相場があまりに収束すると、一方向に向かうトレンド相場に転換することです。
もし、本邦機関投資家に、市場を完全に支配できるという過信が生まれ、レンジを故意に収束させると、トレンドへ相場が転換し、大きな誤算に陥る可能性があります。

Profile
水上 紀行
1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)に入行。1983年よりロンドンや東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。
1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。
バーニャ マーケット フォーカスト代表。

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