今月のファンダメンタルズ vol.3

月刊仮想通貨vol.5 2018年6月23日発売号より

ドル/円と米長期金利

ここにきて、イタリアの政治情勢の混乱が金融市場に影響を与えてきています。
3月に議会選挙が行われたイタリアで政権発足をめぐる協議の行方が混とんとしているためで、為替相場では、ユーロはじめ欧州通貨が、対ドル、対円で急落しています。
特に、ユーロ/円では、昨年の4月、米朝関係緊迫化以降、米系ファンドが大量のユーロ買い円売りに出て、昨年12月には、トランプ大統領によるエルサレムをイスラエルの首都に認定したことも加わり、今年の1月には、137.50近辺まで上昇し、昨年4月の115.50近辺からでは、約22円の上昇を見ました。
ある有名大手米系投資銀行は、140円を予想するまでになりました。
しかし、今年2月から7円ほど下げた後はなかなか上がらず、テクニカルには昨年6月26日の週の寄り付き124.50から週の引け値128.40近辺に出来た大陽線の中に、既に陰線が入り込んできました。
これにより、広義の意味の窓埋めになってきています。
一般的に、「窓埋め」とは、金曜のニューヨーククローズと月曜のシドニーとの間に出来る窓(空)のことを言い、この窓は、結局埋められることが多いとされています。
これと、同じ傾向として、大陽線、大陰線、連続陽線、連続陰線が出現すると、これを窓に見立てて窓埋めが行われることから、これを本来の窓埋めとは区別する意味で、「リターンエース」と呼んでいます。
リターンエースとは、テニス用語で、相手のサーブを打ち返してポイントを取ることを言い、そこから命名しています。
年初来、この広義の窓が、ユーロ/円で、昨年の6月26日の週の大陽線、そして、4月17日の週からの3連続陽線が目立っており、どこかで、埋めに来ると見ていましたが、ここにき6月26日の週の大陽線が埋めに掛かっています。
この分で行けば、近い将来、4月17日からの三連続陽線も埋めに行くものと見ています。
その意味するところは大きく、つまり、昨年4月の米朝関係悪化を理由としたリスク回避のユーロ買い円売りが全否定されることになり、すでにユーロ売りは大量に出ているものの、さらにいっそうユーロ売りは増すものと思われます。
ユーロ/円の週足
左の楕円形から昨年4月の3連続陽線、昨年6月の大陽線、さらに、このテクニカルの分析で行けば、なにか近い将来大きく下落する可能性が、大きな窓とそのリターンエースの可能性から事前に予想されていたわけで、そこにイタリアの政局不安という理由が後からついてきたと言えます。
これを、マーケットでは「理由が後からついてくる」と言いますが、実際の相場の動きが理由よりも先行することは、決して珍しいことではありません。
要は、沈没する船から、ネズミが大挙して逃げるという話と似ていて、ある種本能的に、マーケットは何かが起きるということを察し行動するのだと思います。
今回のユーロ/円の下落に際しても、そうした本能的なリスクからの逃避が起きたものと思います。


ユーロ/円の週足 左の楕円形から昨年4月の3連続陽線、昨年6月の大陽線
出所:Tradingview

Profile
水上 紀行
1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)に入行。1983年よりロンドンや東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。
1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。
バーニャ マーケット フォーカスト代表。

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