今月のファンダメンタルズ vol.2

月刊仮想通貨vol.2 2018年3月23日発売号より

オリンピックを挟み、緊張感が続く米朝関係

 米国のリベラル紙「ニューヨーク・タイムズ」やCNNは、金正恩氏の実妹・金与正氏を派遣した平昌オリンピックでの「微笑外交」を好意的に伝えた。
金委員長はさらに韓国との関係改善をさらに速めるよう、新たな指示も出した。
2月10日に行われた南北首脳会談で、金与正氏は文在寅韓国大統領を(おそらく夏ごろ)平壌に招待する金委員長のメッセージを手渡した。
米国に届く核ミサイルの完成まで時間稼ぎを図る金氏の思惑は誰の目にも透けて見える。
オリンピックの場を借りて米朝対話の糸口を見出したい文在寅氏の努力は理解できるが、その事がいかに困難であるかは米中露日は百も承知である。
むしろ、この無駄な努力が核放棄を促す国際社会にとって足枷となる事を韓国国民は感じ取っている。
文在寅氏への支持率が低下してきているのはその証左だろう。
米国は「オリンピック期間は軍事行動を取らない」と国際社会に表明している。
3月18日がその期限であり、この日は奇しくもロシアの大統領選挙日と重なる。
18日以降は北朝鮮から対話に向けての意思が示されていなければ、米国の軍事行動がいつあってもおかしくない状況が訪れる。
とりわけ、4月中に予定されている米韓合同軍事演習時が最初の山場だ。
文在寅大統領は金委員長の意向を忖度し、軍事演習の中止・延期・縮小を米側に提案するであろうが、米軍が拒否する可能性が高い。
オリンピック直前に軍事パレードを強行した北朝鮮に対し、米国は一歩も妥協する訳にはいかないし、時間的余裕も無いからだ。
既に金委員長は「軍事演習を強行すれば静観しない」と警告している。
もし北朝鮮が言葉通りに新たな挑発を行えば、事態は一挙に緊迫化することとなる。
南北朝鮮のみならず、米中露日どの国も軍事衝突は望んでいない。
米朝双方も過去あらゆるルートを通じて対話の糸口を探して来た。
しかしながら、北の核放棄が全ての前提とする立場の米国と、核保有が絶対条件の北朝鮮との間に妥協の余地は見出せなかった。
筆者は、米国は北朝鮮にこれ以上の時間的猶予を与えないのではと見る。
米韓合同軍事演習後、米国は北からの新たな挑発か、もしくは何らかの対話へ向けた意思表示かで最終判断を下すことになるだろう。
日本にとってはどちらの結論に至っても厳しい覚悟が必要である。
安倍総理は米国による軍事オプションの行使を回避するためにあらゆる努力を惜しまないが「米国の自衛権行使」だと言われれば協力を余儀なくされるであろう。
もう一つのありうる結論としては、北朝鮮が米国に届くICBMの開発を放棄し、他国への核輸出も止める、しかし自己防衛の為の核戦力は保有するというものがあるだろう。
もし後者の結論となった場合、日本も核保有の道を模索する。
その場合、①非核三原則の見直し②NATOが米国と行なっている核シェアリングの可能性を米国と協議 ③米国の小型核開発の日本への影響など、国民を挙げての議論は避けられなくなるはずだ。

Profile
工藤 富夫
元ダウ・ジョーンズ経済通信社在日代表。
海外の主要銀行、証券会社でトレーダーとして活躍後、ドレスナー銀行東京支店のトレジャリーアドバイザー、住友信託ロンドン現地法人のチーフ・ユーロ・ポンド・トレーダーなどを経験。

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