今月のファンダメンタルズ vol.1

月刊仮想通貨vol.2 2018年3月23日発売号より

どこまで続くか? ドルからの資金調達

まずは、2017年の為替相場を振り返ってみましょう。
ここではわかりやすく説明するためにユーロ/ドルで説明することにします。
ユーロ/ドルは2017年の年初からジリジリと上げ出し、その後もユーロ高ドル安が続いてきています。
さて、この2017年の1月に何があったでしょうか?
そうです、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任したタイミングでした。
その後、調整的なユーロ下げの地合いももちろんありましたが、ほぼ一定して上昇してきています。
これと同様の例が、過去にもありました。それは2001年1月、ジョージ・ブッシュ氏の大統領就任時です。
新任の大統領は、結果を早く出そうとしますが、ブッシュ大統領もご多分に漏れず功を急ぎ、中東にプレッシャーを与えました。
しかしそれに対して、オサマ・ビンラディン率いるテロ組織アルカイダが反発し、米旅客機をハイジャック。ニューヨークのワールドトレードセンターに突入、またワシントンDCのペンタゴン(国防総省)にも突入を試みるなど大参事となりました。
この9・11同時多発テロによってブッシュ政権がヒステリックな状態に陥ったのは、記憶されている方も多いでしょう。
このヒステリックな米政権に危機感をもった他の国は、資金をドルからユーロに移しだします。
この動きは2002年から本格化し、2008年までなんと6年間も続くのです。
この間にユーロ/ドルは7000ポイントもの上昇(ドル安)となりました。
そして興味深いことに、ジョージ・ブッシュ大統領の任期は2001年の1月から2009年の1月。
つまり、同大統領の任期中はほぼ“ドル安”だったということになります。
では、トランプ大統領の場合はどうでしょうか?
2017年1月に大統領に就任してからユーロ高ドル安は進行し、4月に勃発した北朝鮮と米国間の緊張にり、ユーロ高のテンポは早まりました。
その後、12月にトランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都に認定。そのことが影響し、再びユーロ高となったのです。
さらに2018年1月になると、ドル/円の下落が始まります。それを追うように、トランプ大統領は米国が抱える貿易赤字の同盟国を含む相手国へ、報復関税を課すことを表明しました。
このことからまたもやドル/円の下落に弾みがつきます。
こうした例から何がわかるのでしょうか?
つまりジョージ・ブッシュ大統領政権下のように、「資金を米国に置いておくことは危険」とみなされれば、資金をドルから移す人々が増えるということ。
この資金を移す人々の主役は、政府系ファンドや年金運用のペンションファンド、中央銀行といったお堅い人たちです。
彼らは決めるまでは慎重に検討しますが、いったん決定すると怒涛のごとく資金を移します。
トランプ大統領政権下においても、同様のことが起こるのではと推測されます。
投資家がトランプ大統領の任期中はドルに資金を置いておくことを恐れるならば、資金はドルに次ぐ規模を誇るユーロや、ユーロほどの規模ではないにしても円に逃避されるのでは、と考えられているのです。

左がジョージ・ブッシュ大統領任期、2001年から2009年のユーロ/ドルチャート。任期中ドル安が続いていたことがわかる。右は2012年から2018年のドル/円チャート。2018年にはいってからの下落に要注目だ。

Profile
水上 紀行
1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)に入行。1983年よりロンドンや東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。バーニャ マーケット フォーカスト代表。

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