今月のファンダメンタルズ vol.1

月刊仮想通貨vol.2 2018年3月23日発売号より

欧州がブロックチェーン技術に尽力する理由

ここ3~4年ほどの間に広く普及したフィンテックという言葉。
これは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語である。
一般的には「ICT(情報通信技術)を駆使した革新的(innovative)あるいは破壊的(disruptive)な金融商品、サービスの潮流」と定義されている。
富士通総研によると、フィンテックの活用例としては「ロボ・アドバイザー」、「マーケットプレイス・レンディング」、「モバイルPOS」などが挙げられている。
これらについては今後随時説明していくが、今回は仮想通貨を支える最も重要な技術である「ブロックチェーン」をめぐる欧州での最新動向に焦点を当ててみる。
ブロックチェーンとは「分散型の台帳技術」。
いったんブロック内で書き込まれると、さかのぼってそのデータを改ざんすることはほぼ不可能となる「仕組み」で、この長所が仮想通貨には欠かせないものとなっている。
2月1日、EC(欧州委員会)は欧州議会の後押しにより、EU Blockchain Observatory and Forumを立ち上げることを公表した。
このフォーラムの関係者によると、欧州がこの分野で世界をリードし、その際立った技術の発展に資することが目的だそうである。
ブロックチェーン技術の研究に対するECの資金的な支援は2013年から続いているが、今後もECは2020年までに総額3億4000万ユーロの資金拠出を行っていく予定であることも同日明らかにした。
政策面では、2016年11月にスタートしたフィンテック向けのタスクフォースを嚆矢としたが、それからわずか1年半足らずでECがより強い関わりを持つようになったのは驚異的なスピードである。
さらに春ごろには、フィンテック・アクション・プランが発表される予定となっている。
欧州での関連規制の整備なども(恐らく、だが)同時進行的に進められていると見られる。
こういった極めて前向きな姿勢の背景には、英国のEUからの離脱交渉に見られるように、EUが直面している単一経済圏解体への危機感がある。
その瀬戸際で「統一通貨ユーロ(これもいわば“仮想的な通貨”である)を通じた単一の経済圏を構築する」という試みにとって、強力な援軍が出現した。
それが仮想通貨であり、そのインフラを支える中核技術こそがブロックチェーンなのだ。
しかもブロックチェーン技術は他の経済取引に応用が利くという点でも、パッチワークのように多様な産業が入り組んでいるユーロ圏の経済実態には合っている。
ブロックチェーン技術は「ユーロ圏の仕組みを背後から支える最強の切り札」と言えるだろう。
対照的なのが日本で、取引の安全性を規制・法整備で強化していくという姿勢が官民ともに依然として強い。
ECがブロックチェーン研究に資金援助を続けるめどとしている2020年は、奇しくも東京五輪開催の年に当たる。
わずか2年ほど後に、メダルの色に浮かれている日本を尻目に、欧米諸国はフィンテックの重要技術で「金メダル」を独占している蓋然性が高い。
そのぐらいの危機感を持って今後、皆さんに情報発信を行っていきたいと思う。

Profile
北村 裕
日本の証券会社に勤務後、米国留学、ニューヨークにて投資銀行業務を経験後、外資系メディアで編集責任者などを歴任。大手運用会社で外資ファンドの調査、提携業務などに長年携わる。現在も金融業界で勤務するかたわら、最新の金融工学などの普及も志す。

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